牛戦車

この牛戦車には夢がある!

そのヤシの木の置き物は谷崎克也の弟を見下している(幸坂)

各駅停車でのんびり動いている車窓から徒歩数分先にあるコンビニの駐車場を横切っているのは谷崎克也の弟だ。徒歩数分が縮んだ先で横切っていた過去など切り捨てて信号待ちをしているのは谷崎克也の弟だ。青信号側の車の群れは孤立気味に赤白黄色とチューリップのように駆け抜けていく。道路脇には水溜りがあり、縫うように走る原付の遠心力で水のような液体を跳ねさせる。谷崎克也の弟に掛からなければ幸いだ。

谷崎克也の弟はランドセルを背負っているので小学生なのだろうが、ヤシの木の置き物に見下されているので中学受験を失敗して一浪しているかもしれない。谷崎克也の弟の赤いランドセルは敵の返り血で染まったからなのかもしれないが、ヤシの木の置き物に見下されているので元から何等かで赤くなっている既製品なのだろう。

信号からは程よく離れた歩道橋には雨と曇り、加えて晴れとの境界線を探してか、三面鏡に映る空とカメラに映る空を見比べるマスコミ関係者。先頭を行くのはリポーター。マイクを持っているからリポーター。もしもの話だが谷崎克也の弟からあのリポーターが見えているのなら将来の夢がリポーターになるはずだが、ヤシの木の置き物が見下しているので早々に諦める夢となりそうだ。

次々と駅を通り抜けもう見えなくなってしまったが谷崎克也の弟がそのまま帰り道を進んでいけば、次第に距離が近づくことになるおじさんは傘でゴルフの素振りをしているので、傘を閉じると内側になる傘の内側部分に入り込んだ元雨水を偶然必然わからず飛ばしている。谷崎克也の弟に掛かっちゃわなければいいな。